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2026/07/13 20:31 ~ なし

第18回 なぜ金沢大学なのか

……で、大学はどうする?」

山下が、静かに問いかけた。

ネクストリーダーの面談スペース。
ホワイトボードには、これまで書き出してきた言葉が残っている。

・国公立
・経営
・社会を見る
・現実と理論
・将来の選択肢を狭めない

涼介は、その文字をじっと見つめていた。
「正直、最初はどこでもいいって思ってました」

涼介は、そう前置きしてから続けた。
「早慶は無理だし、かといって名前も知らない大学に行くのは嫌で……だから、国公立って言葉に逃げてた気がします」

山下は否定しなかった。
「それは普通だよ。でも、ここからは条件じゃなくて理由で決めよう」
そう言って、ホワイトボードの端に新しく枠を描いた。

《涼介さんにとって現実的で、意味のある大学》

「まず、首都圏か地方か」

……地方です」

答えはすぐに出た。
「首都圏は、たぶん流されます。今の自分だと、環境に負ける気がします」

山下はうなずいた。
「いい判断だと思う。じゃあ次。難易度」

涼介は一瞬迷い、言った。
簡単すぎないところです。逃げたって思いたくない」それもまた、本音だった。

「学部は経営でいい?」

「はい。社会の仕組みとか、お金の流れとか……勉強としても、ダイレクトに現実とつながってる気がします」

その言葉を聞いて、山下は少しだけ表情を緩めた。
「じゃあ、ここまでをまとめるよ」

山下はペンを走らせた。

・地方国立
・経営系
・全国的評価がある
・共通テスト比重が高い
・二次で考える力が評価される

その条件に、ゆっくりと名前が重なっていく。

……金沢大学」

涼介は、初めてその名前を自分の進路として見た。

正直、遠いと思った。簡単だとも思えなかった。でも、不思議と「無理だ」とは感じなかった。

「ここなら……今からでも、勝負できますか?」涼介の声は、少し震えていた。

山下は即答しなかった。代わりに、こう言った。今のままなら無理だね」

涼介の胸が、きゅっと縮む。

「でも――

山下は、はっきりと言った。やり方を変えれば、十分に現実的だその言葉は、慰めでも、勢いでもなかった。

・共通テストで取りに行く科目
・二次で落とさない戦略
・今から間に合う現実的な配点計算

一つ一つを、淡々と説明される。

涼介は、初めて大学受験が設計できるものだと知った。

……行きたいです。金沢大学」その言葉は、今までで一番はっきりしていた。

「よし。じゃあ決まりだ」山下はそう言って、ホワイトボードに大きく書いた。

目標:金沢大学 人間社会学域経済学類

「ここから先は、迷わないことが大事だ」

涼介は、その文字を見つめながら思った。
――初めてだ。
――“
逃げじゃない進路を決めたのは。

外は、もうすぐ春だった。


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